ウォッシュドやナチュラル、サンドライド…。最近はカフェや豆屋さんでも、コーヒー豆の加工法が併記されているのをよく見かけるようになりました。みなさんはこれ、何を意味しているかご存じですか?実はこの加工法を知るだけで、好みの味のコーヒーを選びやすくなるんです!今回は、主要な加工法について、そしてその結果どんな風味のコーヒー豆に仕上がるのか、詳しくご紹介します。
いつもなんとなくでコーヒー(やお豆)を選んでいる方にこそ、必見の内容です☺
そもそもコーヒーの「加工」って?
私たちが普段コーヒー豆として目にするものは、「コーヒーノキ」というアカネ科の植物の種子です。コーヒーチェリーというサクランボのような実が木に実り、それを収穫します。
コーヒーの実は、細かく分解すると外側から
1. 外皮
2. 果肉
3. ミューシレージ(粘液質の層)
4. パーチメント(内果皮と呼ばれる種子を保護する層)
5. シルバースキン(ピーナッツの薄皮のような薄い柔らかい層)
6. 種子
といういくつもの層で構成されています。
このうち、コーヒーとして私たちが利用するのは、種子の部分のみです。
したがって、コーヒーチェリーを収穫した後、種子以外の層を取り除き、焙煎できる状態にする必要があります。これが「加工」です。
加工には大きくいくつかの手法があり、それぞれ生み出される風味にも違いがあります。
以下では代表的な加工法についてご紹介します!
代表的な加工法
ナチュラルプロセス(自然乾燥式)
自然乾燥式はコーヒーチェリーをそのまま天日で乾燥させる方法で、最も古い加工法と考えられています。「サンドライド」と名前の付くものがこれに該当します。
コンクリート製の地面や、あるいはアフリカンベッドと呼ばれる乾燥棚に収穫したコーヒーチェリーを敷き詰め、定期的にかき混ぜて、天日で均一に乾燥させます。乾燥してレーズンのような状態になったコーヒーチェリーを脱穀機にかけ、種子以外の層を取り除きます。
ナチュラルでは、果肉を一緒に乾燥させるため、他の加工法と比較してフルーティーさが特徴のコーヒーとなります。また、加工法がシンプルであるため、低コストで加工ができるといわれています。
一方で、天日干しをするため、安定して乾燥した地域でしかこの方法でおいしいコーヒーを安定的に作ることができません。そのため、ナチュラルはエチオピアやブラジル、イエメンなど限られた地域でしか行われていません。さらに、ナチュラルではお豆の選別が難しいため、過完熟などの欠点豆が多く含まれやすいというデメリットもあります。
・ナチュラルはそのまま天日干しをする加工法
・フルーティーさが特徴のコーヒーができあがる
・安定して乾燥した地域でしか採用されていない
・欠点豆を選別することが難しい→均一性を担保するためには丁寧な手作業が必須
ウォッシュド(水洗式)
ウォッシュドは名前の通り、大量の水を使用する方法です。
収穫されたチェリーは加工場に運ばれると、まず水層に入れられ、良い豆(水に沈む傾向がある)と欠点豆や小枝などの夾雑物(水に浮く傾向がある)に選別されます。
続いて、選別された完熟豆はパルパーと呼ばれる果肉除去機に入れられ、果肉の大部分がここで除去されます。
果肉がまだ少し残っているお豆は、つぎに水層の中に浸されます。ここでは、発酵によってミューシレージ(粘液質の層)を微生物に分解してもらいます。この発酵の作業により、コーヒーの風味には酸味が増すという影響があります。
発酵が終了したお豆は、機械で洗われ、ミューシレージが完全に取り除かれます。その後、ナチュラルと同様にコンクリート製のパティオや乾燥用の棚で乾燥され、寝かされます。最後に皮(パーチメント)が剥かれて出荷できる状態となります。
水洗式ではお豆の選別が十分に行われることにより、クリーンな洗練された味のコーヒーが生み出されます。また、発酵過程を通じて酸味が引き出されるのも大きな特徴です。ラテンアメリカ産のコーヒーの大半はこのウォッシュドによって加工されており、そのためラテンアメリカのコーヒーは際立った酸味で有名です。
一方、ウォッシュドでは、水を大量に使用するという環境への影響が問題視されています。チェリー1kgあたり100リットルもの水が必要とされており、現在では、これに代わる方法として機械で粘液を除去するケースも増えてきています。
・ウォッシュドは水に浸して発酵させる加工法
・クリーンで酸味の際立つ味わいのコーヒーとなる
・大量の水を使用することが問題視されている
セミウォッシュド(スマトラ式)
この加工法は、インドネシアのみで採用されている方法です。少し特殊ではありますが、マンデリン等の人気のお豆の味わいはこの方法によって生み出されています。
セミウォッシュドでは水洗式と同様に、まず果肉を除去し、その後水層に入れて発酵を行います。ここでミューシレージを分解しますが、水洗式よりも比較的短い時間で行われます。
続いて、パーチメントのみに覆われたお豆を、軽く乾燥させます。この時点での水分量は約40%程度です。
やや乾燥したお豆は脱穀機に入れられ、パーチメントが除去されます。その後、最終乾燥が行われますが、パーチメントがないため、短い時間で乾燥を終えることができます。インドネシアの雨が降りやすく、天日干しするための広大な敷地が確保しにくいという地域性に適した加工法だといわれています。
セミウォッシュドで加工されたお豆の特徴は何といっても重厚なコクです。水洗式とは異なり酸味はほとんどなく、代わりにハーブのような特徴的な香りがあります。
・セミウォッシュドはウォッシュドに似ているが、発酵が短く乾燥を2回行う方法
・重厚なコクと酸味の少なさが特徴(マンデリンなど!)
・多湿なインドネシアの機構に適した方法
パルプドナチュラル
こちらは、ブラジルの一部で採用されている加工法です。ラテンアメリカではウォッシュドが一般的ですが、ブラジルではこちらのほうが一般的です。
収穫したコーヒーチェリーを水層に入れ、完熟豆と夾雑物を振り分けます。
続いて果肉を機械で除去したのち、ミューシレージが多く残った状態で乾燥棚に広げ、そのまま十分に乾燥させます。この際、均一に乾燥するよう定期的にかき混ぜます。
その後脱穀が行われ、パーチメントが除去されると、出荷の準備が整います。
パルプドナチュラルでは、ミューシレージを一緒に乾燥させることで、粘液に含まれる糖分がコーヒーのボディと甘みに影響を与えると考えられています。また、粘液がついた状態で乾燥させるため、味が悪くなってしまうリスクもあり、丁寧な作業を求められる方法です。
・ブラジルで一般的な加工法
・水を用いた選別を行うため、クリーンな味となる
・酸味は控えめでボディ感と甘みが特徴のコーヒー
ハニーウォッシュド
パルプドナチュラルと似ている加工法ですが、ブラジル以外の中米で行われるものをパルプドナチュラルと呼びます。なんだかはちみつのように甘い味を連想させますね☺
パルプドナチュラルとの違いは、「ミューシレージをどれだけ残すか」に様々な段階がある点です。
ハニーウォッシュドでは、
ミューシレージを最低限のみ除去したもの…ブラックハニー
5~50%除去したもの…レッドハニー
50~75%除去したもの…イエローハニー
75%~90%除去したもの…ホワイトハニー
と呼びます。これは、乾燥後のお豆の色がミューシレージの除去率によってこのように変化するためです。
ハニーウォッシュドもパルプドナチュラルと同様に、ミューシレージを一緒に乾燥させることによる甘みが引き立つコーヒーとなるという特徴があります。また、ミューシレージの除去率によって、その味わいは変化します。
さらに、乾燥の際に発酵したりダメになってしまったりしないよう、丁寧さや、慎重さが求められるという点でもパルプドナチュラルと共通しています。
・パルプドナチュラルと同様の加工法で、ブラジル以外で行われるもの
・ミューシレージの除去率によって呼び方や味が変化する
いかがだったでしょうか。
コーヒーを注文するとき、「たしかナチュラルはフルーティーだったような…」「スマトラは重厚なコク…」なんて思いだしていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
Have fun your coffee☺
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